戸惑いの夕方














買い物をして、さんの家に戻ってきたのは夕方頃だった。
さんは荷物をキッチンに置くと、寝室のクローゼットを空けて何やら始める。

「とりあえず、衣装ケース一つ空けたから。ここ使ってね」
「ありがとうございます」

その姿をじっと見ていると、さんはにっこり笑って僕を振り返りながらそう言った。
僕専用の洋服入れを用意してくれていたことに驚きつつ、お礼を言う。
何だか嬉しくて、いそいそと洋服の入った袋を引っ張ってケースの前まで運んだ。

「手伝う?」
「だ、だいじょうぶです!」

動かしにくい小さな身体でよろけそうになる僕に、さんがクスクス笑いながらそう聞いてくる。
この身体じゃなかったら・・そう思いながら慌ててそう言い返した。
妙に恥ずかしい気がして、顔が熱くなる。

「そう?じゃあ、夕飯の準備しちゃうね」
「はい!」

さんは微笑みながらそう言って立ち上がった。
それに返事を返して、いそいそとケースに向き直る。
袋の中から服を取り出しながら、ちらりとさんを見た。
楽しそうに料理を始める姿に、思わず笑ってしまう。
なんだか僕まで楽しくなってきて、洋服を仕舞う動作も軽くなった。

さん、おわりました。てつだうことありますか?」

早々に服を仕舞い終えて、僕はさんのいるキッチンへ向かう。
さんの背中にそう声をかけた。

「んー、まだないかな。テレビでも見てていいよ」
「はぁ・・」

さんは少し考えるような声を上げると、僕を見てそう言う。
僕は曖昧に返事を返して、ふらりと部屋の中を見渡した。
思えば、こんな風にすることもなく、のんびりした時間があった時はなにをしてたのだろう。
むしろ、のんびりした時間があったのかすら覚えてないけど・・。
師匠の借金だらけだったし、生きるのに必死だったし・・教団に入ってからはアクマのことで手一杯だった。
まだこの世界にアクマが存在するのかも分からないし・・。

「・・・」
「アレン君?」
「、・・・」

そう思いながらぼんやりと窓の外を眺めていると、後ろから呼ばれた。
はっとして振り返れば、さんが心配そうに僕を見てる。

「・・どうかしましたか?」
「ううん・・これ、混ぜるから手伝ってくれる?」

慌てて笑顔を取り繕いながらさんに聞き返した。
さんはちょっと困ったように笑みを浮かべて首を振ると、にっこり笑ってそう言う。

「はい!」

何も聞かれなかったことに内心ほっとして、僕は勢いよく返事をしながらさんに駆け寄った。
多分聞かれても何も答えられなかったかもしれないし・・。
答えられたとしても、アクマ云々の話をさんに信じてもらえる自信はない。

「これでジャガイモつぶしてくれる?終わったら言ってね。きゅうりとか入れて混ぜるから」
「わかりました、・・」

ヘラとボウルを僕の前に差し出してそう言うさん。
ボウルを受け取って返事を返すと、不意にさんが僕の頭を撫でた。

「よろしくね」

優しい手つきにさんを見上げると、さんがにっこりと微笑んでそう言った。





















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