続く戸惑い
さんとの夕飯を終えて、僕はソファの上に座ってた。
さんは現在、お風呂に入ってる。
特に何をするでもなく、テレビの映像を横目に自分の手を眺めた。
赤い左手は、この部屋では異様に見える。
流されるように過ぎてしまった一日で、さんは何度この手を握っただろう。
自然過ぎて、今の今まで気づかなかったけれど・・。
普通はこの手を避けるのに、当たり前のようにさんは手を取ってくれた。
「この目のペンタクルについても、ふれませんし・・」
呪われた左目。
アクマに囚われた魂が見える目。
全てがそのままなのに、僕の姿は小さく、幼い。
本当は心のどこかで分かってたんだ。
今の僕がアクマ相手に敵う訳がない。
そうなったら、もしもの時にさんを守れない。
「ここは・・ぼくのしってるせかいじゃない」
「アレンくん?」
目を伏せて思わずそう呟いた。
小さな溜め息を吐いた直後、さんに呼ばれる。
「っ、は、い・・、・・」
「お風呂どーぞ。しっかり温まってね」
「あ、ありがとうございますっ・・!」
はっとして振り返ると、さんが濡れた髪をタオルで拭きながら近づいてきた。
なんとなく目のやり場に困って、僕は慌てて立ち上がりながらそう答える。
「あ、アレン君・・!」
急に煩くなった心臓に戸惑いながら、バスルームへと駆け込んだ。
さんが僕を呼び止めた気がしたけど、出て行けなかった。
なんとなく溜め息を吐きながら服を脱いでシャワー室に入った。
「アレン君?」
「うゎっ、あ、は、はい!?」
ぼーっとシャワーを浴びていると、さんの声がドア越しに聞こえる。
吃驚してなぜかどこかに隠れるところがないか探してしまった。
「着替えとタオルここに置いておくねー」
「えっ、あ、すみませんっ!」
そんな僕を余所に、さんはそう言う。
その言葉に胸を撫で下ろしながら、慌てて返事を返した。
「ううん。じゃあ、ごゆっくり」
そう言い残して、さんは脱衣所を出て行く。
それにほっと息をつきながら、シャワーを頭から被った。
目を瞑ったら、教団のみんなの姿が浮かぶ。
先の見えないこの現状は、どうにも居心地が悪かった。
それに、さんの優しさに甘えてばかりもいられない。
だって、このままだと・・。
「かえりたく、なくなりそう・・」
自分でそう呟いておいて、部屋の中で反響した自分の声に目を見開いた。
僕は今、何を・・。
考えてしまった事実を否定するように水の方の蛇口を捻った。
「つめたっ・・、・・!!」
あまりの冷たさに思わずそう声を上げながら、捻ったばかりの蛇口を逆に捻りなおす。
自分の無意味な行動に溜め息を吐いて、その場にしゃがみ込んだ。
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